川崎市内の中学校の刊行物で、イラストを無断使用していたことがニュースになりました。
著作者と示談が成立し、相手方に損害賠償(通常の使用料相当)11万円を支払ったとの事が2022年9月15日に川崎市より正式に発表されました。
当サイトでも著作権についての記事を投稿しているので、今回のニュースについて少し掘り下げてみたいと思います。
NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220916/k10013821041000.html
概要
学校通信を作成する際に著作権侵害を認識せずに他人の著作物(イラスト)を無断で使用。著作権者代理人弁護士からの受任通知兼請求書が届き、調査の結果、著作権侵害を認め賠償金を支払った。
詳細については川崎市ホームページ(報道発表資料)に掲載されています。
教育現場における著作権教育について
当サイトでも著作権に関する記事をいくつか掲載しておりますが、教育現場での著作権教育についても取り上げておりました。
私自身が心配していた内容の一つとして、著作物が自由に使える場合 として以下の内容がありました。
教育機関における複製等(第35条)
教育を担任する者やその授業を受ける者(学習者)は,授業の過程で使用するために著作物を複製することができる。また,「主会場」での授業が「副会場」に同時中継されている場合に,主会場で用いられている教材を,副会場で授業を受ける者に対し公衆送信することができる。複製が認められる範囲であれば,翻訳,編曲,変形,翻案もできる。
ただし,ドリル,ワークブックの複製や,授業の目的を超えた放送番組のライブラリー化など,著作権者に不当に経済的不利益を与えるおそれがある場合にはこの例外規定は適用されない。
出典:文化庁 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html
こちらはあくまでも学校の授業内での利用に限られており、授業で使用したものを自宅に持ち帰る事や、ドリルをコピーして使う事は認められていません。自分の経験から、このことについてあまり理解されていないというのも感じていました。
あくまでも私個人の推測ですが、今回の川崎市の件も著作権侵害について認識していなかったとの事ですので、教育現場という事で使用しても問題ないという認識だったのかもしれません。
再発防止策について
当サイトはミスを指摘する事が目的ではありませんので、同じような事が起こらないようにするために、教育現場で必要な再発防止策について考えてみたいと思います。
以下は川崎市の報道発表資料の一部を引用したものです。
3 再発防止策等
・校長研修において、全校長に対し再発防止に向けた注意喚起を行いました。
・各学校の情報教育学校担当者(教員)を対象とした連絡会において、著作物の適正な使用について、あらためて周知徹底をします。
・著作物の使用に関することについては、弁護士より専門的な視点から指導・助言を受け、適切に対応します。
出典:川崎市ホームページ 報道発表資料「市立中学校における著作権侵害に伴う賠償について」PDF
https://www.city.kawasaki.jp/templates/press/cmsfiles/contents/0000143/143568/tyosakuken.pdf
記載されている内容については、必要不可欠な内容だとは思いますが具体的にどんな事をするかについては明記されておりません。
川崎市の中では、具体的な対策を検討している可能性はありますが、今回の件はどの自治体で起きても不思議ではありません。では具体的にどんな対策を講じるべきでしょうか。
校内研修後にテストを行う
各学校で先生方に研修を行っていると思いますが、その理解度について確認をしているというのはあまり聞いたことがありません。個人の裁量に任されているというのが現状ではないでしょうか。著作権については個人解釈に任せるのではなく、共通の認識を持てるようなシステム作りが必要ではないかと思います。
ここで、専門的な視点から指導、助言を受けるのがいいのではないでしょうか。
資料作成で使用できるサイト等を明記する
インターネット上には優れた素材や画像が沢山あります。個人で使用する場合は個人の判断になりますが、組織で使用する場合は使用して良いサイトの一覧を用意しそれ以外は事前確認を義務付ける必要があるのではないでしょうか。※授業内での利用はのぞく
著作権侵害は場合によっては企業一つがつぶれてしまうぐらいの、大きな問題に発展してしまいます。一般企業の場合、法務部での事前確認があり、著作権の所在が不明な情報を社外資料に利用するという事はまずありえません。個人での判断は難しいと思いますので、組織として共通の情報を用意しておくのが良いと思います。
ドリル・ワークブックのコピーは著作権法違反であることを周知する
ドリルの内容をコピーして配布する行為は、授業で使用する範囲に含まれません。著作権者に不当に経済的不利益を与えるおそれがある場合には教育機関における複製等(第35条)の例外規定は適用されないという事を周知する必要があります。
教育現場で利用しやすいイラストサイト
以下に記載するサイトは配布物やWEB等でも利用しやすいサイトになっています。サイトごとにルールが異なりますので、必ず利用規約やよくある質問等をご確認ください。
※商用利用の場合は、有料、または事前に許可が必要な場合があります。各サイトの利用規約をご確認ください。
いらすとや
イラストレーターのみふねたかし氏が運営されているサイトです。種類が豊富で加工や印刷物への使用もできますが、1つの制作物あたりの掲載点数上限が決まっておりますのでご注意ください。
無料イラスト いらすとわんぱパグ
季節ごとのかわいいイラストが掲載されています。利用規定を確認してご利用ください。
農民イラスト
授業で使えそうな生物や植物のかわいいイラストが無料で利用できます。利用規約を確認してご利用ください。
まとめ
著作権法の内容は複雑で悪気はなくても知らないうちに侵害してしまう可能性があります。一般的にフリー素材として公開されている画像にも著作権があり、利用方法は規約に定めれらています。
ましてや、インターネット上に公開されている著作者が不明のイラストや画像を使用すると今回のように知らないうちに著作権を侵害してしまうという事にもなりかねません。今回記載させていただいた再発防止策は一例にすぎませんので、他にも有効な対策は沢山あると思います。もし学校ごと、自治体ごとに良い案がございましたら、コメント欄にて共有していただけると助かります。
当サイトでも著作権に関する記事を掲載していますので、ぜひ参考になさってください。
記事に関するご意見、ご感想がございましたらコメント欄よりお願いいたします。個人情報や誹謗中傷が無い事を確認後、公開させていただきます。
※公開されたくない場合はお問い合わせフォームよりご連絡いただけると幸いです。
コメント